リモート
火曜日、彼の休日前夜。

義務のようにお互いの近況報告をして、ふいに沈黙が訪れた時だった。

『私たち、このままなのかな』

問いかけなのか独り言なのか判断しかねるくらいのトーン。
言い出したのが自分だと気付くまでに三秒。

『どういう意味』

『あ、いや、特に意味はないけど』

察してちゃんだな、と自己嫌悪に陥る。
それでも言葉を撤回しなかったのは、思うところがあったからだった。

私の言葉に少し戸惑うような沈黙が流れたが、少しして彼の『別れたいの?』という言葉が聞こえてきて、私は少し答えに迷って『ううん』とだけ答えた。

嘘じゃない、別れたい訳ではない。
彼は『それなら、よかった』と言ったけど、どこか取って付けたように感じた。

彼は『別れたい』とも言わない代わりに、『好きだから別れたくない』とも『遠距離頑張ろう』とも言わなかった。
そっちは明日休みなら、来てくれればいいのに。
自分勝手だと思いながら、私は久しぶりに心か寂しいと強烈に実感した。

だから、別れたくなった。

この先もずっと寂しさから目を背けては、思い出したように衝撃を受けることを想像したら苦しかった。
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