リモート
別れよう、と告げられたのはその会話の一週間後だった。
なんとなく分かっていた。
ショックは思ったよりも少なかった。

最後は会って話したいと言ったら『そうだね』と答えてくれたけど、『今週は忙しくて』『出張が入った』と徐々に延期されていった。
そこに嘘はなさそうだったが、このまま終わっていくと思った。

そのくせ、電話で近況を報告し合うことは変わらなくて、彼に『ちょっと待って』と言われて私たちはまだ別れてないことを知った。

でも、数ヶ月延期されていくうちに話し合わなくてもいいかと思い始めた。
寂しさは日常に忙殺されて薄れていった。

じゃあ、このままでいい。

これまで通り他愛のないやりとりを繰り返す。
このままずっと過ごすのかと思っていた矢先、彼がリモートで話そうと言い出したのだった。『本当に仕事が忙しくて会えなくて申し訳ない』

『ううん、大丈夫』


『俺たち、別れよう』


『リモートで別れるって流行ってそう』

自分の全然面白くない言葉に笑ったけど、神妙な表情をした彼を見てやっぱり面白くない。

『……このままじゃ良くないから』

今の状況は、別れることでしか打開できないの。
そう言いかけて、あ、私も別れたかったはずなのにと口は開かなくて頷くことしかできなかった。
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