とろけるような、キスをして。
***
「……ふぅ。着いた」
ついに、帰ってきた。
飛行機の窓から見ていて知っていたものの、こっちでは雪が積もっていた。
到着ゲートに出た時にはすでに窓の向こうは真っ暗。急いで電車に飛び乗って、地元の最寄駅へ。
そこから歩いて実家にたどり着いたのは、夜の二十二時を回っていた。
キャリーケースを引きながら鍵を開けて家の中に入る。
また一ヶ月放置していたから少し埃っぽい気がした。
昨日伯母さんに立ち合いをお願いしていて、家の電気やガス、水道は開通していた。
伯母さんも年末で忙しいのに、感謝しかない。
荷物は一旦玄関に置いておいて、自室に向かいその寒さに震えた。暖房をつけると、そのまま私はベッドに倒れるように寝転ぶ。
「……帰ってきた」
口にすると、一気に実感が湧いてきた。
この三ヶ月の間に何度かここに来ているけれど、帰省と実際に帰ってきたのでは心持ちが全く違う。
むく、と起き上がって、両親が映った写真立てを手に取った。
「お父さん。お母さん。親不孝でごめん。ただいま」
やっぱり、この街が好きだ。この家が好きだ。
誰からも干渉されない都会の空気が心地良いと感じる人もいるだろうが、私はこの街の人の温かさが好きだ。
「……そうだ。連絡するんだった」
鞄からスマートフォンを出して、"深山修斗"の文字を探す。
着信履歴の一番上にその名前があるのが、見る度になんだかむず痒い気持ち。