とろけるような、キスをして。
ロトンヌに着くと、closeの看板を見ながら中に入る。
お店自体は九時からやっているはずなんだけども。おかしいな。
いつも流れているクラシックのBGMも今日は聞こえない。
「あ、みゃーこちゃん。いらっしゃい」
「もしかして今日ってお休みでした……?」
いつものエプロン姿ではなく、パーカーにスキニーを履いたラフな雛乃さんの姿。
「あれ、修斗から聞いてない?先週お店のオーブンが壊れちゃってね。今臨時休業中なの。明後日新しいオーブンが搬入されるから、年明けから再開する予定」
「そうだったんですか。知りませんでした」
表に張り紙があったのかな。見逃した。
雛乃さんに促されるままカウンターに座ると、言っていた通りサンドウィッチとホットチョコレートが出てきた。
「そんな忙しい時に来てすみません」
「みゃーこちゃんならいつでも大歓迎!だから気にしないで?」
にっこり笑う雛乃さんの後ろから、大和さんも出てきた。
「どうしても男手が足りなくて修斗にいろいろ手伝ってもらってたんだけどさ、アイツ勝手に昨夜出て行ったっきり戻ってこねぇから」
「……すみません。うちに来てました」
「ごめんな、修斗が変なことしなかったか?襲われたりしてない?」
「……」
そこはノーコメントで。そう言いたいけど、私の様子を見た二人が顔を見合わせる。