とろけるような、キスをして。
新たな環境
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三週間後。晴美姉ちゃん家での年越しパーティーを楽しんでから数日が経過した、一月上旬。
「初めまして。本日からお世話になります。野々村美也子と申します。よろしくお願いいたします」
「初めまして。千代田 藍子と申します。よろしくお願いいたします」
私は母校である白河高等学校での初出勤を迎えていた。
理事長室、職員室に挨拶をして、最後に事務室での自己紹介。
職員室では晴美姉ちゃんと修斗さんがにこやかにこちらを見ていてとても気まずかった。
ここ、白河高校の事務室には私を含めて事務員は二人だけだ。
一人産休に入ったため、この一ヶ月ほどは千代田さんが一人で学校の事務作業を一手に引き受けていたのだとか。
そりゃあ大変だ。臨時で人を雇うわけだ。むしろ私一人でも足りないのではないだろうか。あと一人か二人いてもいいのでは……?
「野々村さんが来てくれて助かりました。さすがに私一人じゃもう手が回らなくて。慣れない業務もあるとは思うんですけど、一緒に頑張りましょうね!」
「はい。よろしくお願いいたします」
とても可愛らしい笑顔が魅力的な千代田さんは、私より三つ年上の女性だ。
「私も二年前からここで働いてるんです」
「そうなんですか?」
「はい。離婚して東京からこの街に出戻りして来たんですけど、その時にちょうどこの学校の求人を紹介してもらって」
「そうだったんですか」
どうやら千代田さんはシングルマザーらしい。だから残業や休日出勤もなかなか難しく、一人で回すのは無理があった。そのため今回の私の採用に至ったというわけだ。