とろけるような、キスをして。



「そういえば、先生は結婚してないの?」



 こんなにイケメンで、昔からモテモテで、頭も良くて。
車の運転もスマートでよく喋るしよく笑う。
元生徒にもこんなに優しくしてくれる。


結婚してるんだとしたら、奥さんに勘違いされないといいんだけど。


 改めて軽率に先生の車に乗ってしまったことに焦りを覚えた。


しかし、先生は



「結婚?してないよ?」



とまたあっけらかんと答える。



「え、してないの?」


「うん。え、ダメ?」


「いやダメじゃないけど……」



 あれだけモテていたから結婚していない事実にびっくりしてしまう。



「じゃあ彼女は?いるんでしょ?」


「いないよ?なに、そんなに俺のこと気になる?」



 ニヤッと笑った先生に、私は慌てて両手を振って否定した。



「ち、違うよ、もし彼女さんとか奥さんがいるなら、こうやって車に乗せてもらうのは軽率だったなって……思って」


「ははっ、みゃーこは昔っからそういうところ真面目だよな?」


「……そうかな」



 確かに昔から、出会う人皆に真面目だと言われ続けてきた。自分ではそうは思っていなくて、言われるたびに複雑な心境になる。


褒め言葉なんだろうけれど、私はあまりその言葉が好きではない。


融通が効かない、と言われてるように聞こえてしまうからだ。



「普通、男の車に乗れって言われたら警戒するもんだと思うんだけど」


「だって、先生だし。警戒するところ無いじゃん」


「うーん、喜ばしいのか悲しむべきか」


「なに?」


「いーや、何でもない」



 先生が何か苦笑いをしていた気がするけれど、聞いても答えてくれなかった。


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