とろけるような、キスをして。
その後も温泉地に着くまでの道中、気になるところを見つけるたびにそこに向かい、美味しそうなものを食べたり雑貨屋さんを見たり。
道の駅でシフォンケーキの出店があり、焼き立てのショコラシフォンを一つ買ったり。
「さっきあれだけ甘いもん食ったのに」
「うん。でも美味しそうだったから。ふわふわだし」
「確かに美味そう」
「後で一緒に食べよ」
「晩飯食った後で胃に入る余地があればな」
呆れたように言うけれど、当たり前のように私に財布を出させるつもりはないらしく、シフォンも素早く買ってくれた。
「はい。これも」
「え?」
「サービスのはちみつジンジャーだって。外寒いし、ちょうどいいからみゃーこにあげる。これ飲んであったまって」
「修斗さんは?」
「俺は大丈夫。ほら」
「ありがとう」
受け取った紙コップからは甘い香りと一緒に湯気がふわりと漂っている。
ふー、と息を吹いて覚ましながら一口飲むと、柔らかな甘さが口いっぱいに広がった。
修斗さんは大丈夫と言っていたけれど、私の右手と繋がるその左手はひんやりしている。
「修斗さん。一口あげる。美味しいよ?」
「いいの?」
「うん。一緒に飲みたい」
「ありがと」
やっぱり強がりだったのか、少し寒かったようで。
「はぁー……、あったまる。美味い」
と微笑んでいた。
「そろそろ宿に向かうか」
「うん。運転疲れてるのに、ごめんねいろんなところ寄っちゃって」
「ん?いいよ。俺も見たかったし。よし、行こ」
絡められた指にまだ慣れなくて、それだけで赤面してしまいそうだった。