とろけるような、キスをして。



「……可愛い」



 耳元で呟く声に、顔を逸らす。


 それを待っていたかのように、逸らした先にあった手で抑えられた。そしてそれに驚いている間に、耳にちくりとした痛みが走る。



「っ……」


「逃げんな」



 耳を甘噛みされて、微かな痛みにぎゅっと目を閉じていると、顔を抑えていた手が頰を伝って首筋をツー……と撫でた。


そしてそこから私のうなじを執拗に何度も撫でる。



「……髪、結び直したの?お団子似合ってんね。……ここ、うなじ見えてんのやばいわ。これわざと?」


「んっ……温泉は、女の人は髪の毛を高い位置で結ぶものなのっ……」



 無意識に吐息が漏れる。お腹に回る手に、自分の手を重ねた。



「ふーん?俺のためじゃないの?」


「なにをっ……」



 不満そうな声と同時に、うなじにあった手が私の顔を引き寄せる。



「んん……」



 振り向いてすぐに重なった唇。


それは私の唇を味わうかのように、しっとりと濃厚なもの。


外はいろいろな音が響いていたはずなのに、あっという間にそのキスに翻弄されて何も聞こえなくなる。


 しばらくキスに夢中になっていると、次第にお腹にあった手が段々と上にあがる。そしてその先にある膨らみを捉えたと同時に、それまでゆっくりと味わうようだったキスが、突然噛み付くような激しいものに変わる。


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