とろけるような、キスをして。
「……深山先生」
「……うん」
真っ直ぐに二人を見つめたまま、呆然と立ち尽くすみゃーこは
「……おとう……さんと、おかあさん」
その二人が両親だと、認めざるを得なかった。
元々の姿ではなくても、家族にしかわからないところがあるのだろう。
「……そうか。わかった。頑張ったな」
そんな言葉しかかけることができなかった。
すぐにその身体を抱きしめて、遺体から身体ごと視線を逸らすように引き寄せた。
そして今にも倒れそうな身体を支えながら、部屋の外にある椅子に座らせて、その肩をずっと摩っていた。
少しして、みゃーこの親戚が数人と四ノ宮先生が走って来た。
その頃には現実を受け入れ始めたみゃーこが全身をガタガタと震わせていて、
「わ、わたしのせいだ……」
と焦点の合わない目で何度も言う。
俺は必死に「違う。みゃーこは何も悪くない」と声を掛けてその身体を支えることしかできなかった。
「美也子!」
「……あ……はるみ、ねえちゃん……」
四ノ宮先生が泣きながらみゃーこを抱きしめた。
「美也子。遅くなってごめんね、美也子」
四ノ宮先生も、その名前を呼ぶことしかできない。
何と声を掛けて良いのかが、わからなかったのだ。
まして、四ノ宮先生にとっては自分の親戚だ。
自分だってパニックになっていたはず。
泣いている四ノ宮先生とは対称的に、全身震えているのに泣いてはいないみゃーこ。
多分、一度にたくさんのことが起こりすぎて、脳が正常に処理しきれなかったのだろう。
そんな姿に、どんな言葉をかければいいのか。
生徒の親の死と触れることなど、今まで無かったから。
俺は二人に何も言えないまま、親戚の方に挨拶とお悔やみを伝えてその場を去ることしかできなかった。
自分の無力を痛感した瞬間だった。