とろけるような、キスをして。
「先生、ありがとうね」
「……みゃーこ、俺は……」
無意識に伸ばした手は、空を切って行き場を失った。
「あの時、先生がずっとそばに居てくれて嬉しかった。一人だったら、立ってもいられなかった」
「……」
その手に持つのは、卒業証書。
結局、みゃーこは一度も人前で泣かなかった。
四ノ宮先生は最後まで"一緒に住もう"とみゃーこを説得していたものの、みゃーこの意志は固く、キャリーケース一つだけを持ってそのまま飛行機に乗って行った。
拳を握りしめることしかできなかった俺は、教師として、みゃーこを送り出した。
そしてそれからというもの、俺は目に見えて抜け殻のようになっていたと思う。
四ノ宮先生に"深山先生がそんなに落ち込んでると美也子が怒る"と言われてしまうほどに。
ロトンヌに行って、大和の淹れてくれたブレンドコーヒーを飲みながら底なし沼に沈むかのように落ち込む日々。
大和の家で酒を飲んだら悪酔いしてしまい、危うく出入り禁止になるところだったこともある。
「薄々思ってたけどさ、お前、やっぱりみゃーこちゃんのこと……」
「……あぁ。失ってから気付いたってやつ?馬鹿みてぇだよな。まだ二十歳にもなってない生徒を好きになるなんて」
言葉にすると、余計に切なさと悲しみに飲み込まれそうになった。