とろけるような、キスをして。
「……ねぇ、修斗さん」
「ん?」
「私、なんであの大学目指してたんだっけ」
確か、修斗さんに相談しているうちにアドバイスされて、選んだような。
「忘れちゃった?」
「うん。なんか両親のことがあってから、高校の頃の記憶がごちゃ混ぜになってて。いろいろ忘れちゃったことが多いんだよね」
修斗さんとの出会い然り、大学についても然り。
ぽっかりと記憶から抜け落ちている部分がいくつかあった。
その抜け落ちた部分を脳が勝手に前後の記憶で雑に繋ぎ合わせようとするものだから、さらに曖昧になっていくのだ。
「図書室でさ、俺と二人で進路相談みたいなことしたの、覚えてる?」
「……え?」
そう言えば、前にそんな夢を見たような……見ていないような。
「その時に、みゃーこに将来の夢聞いたんだけど、覚えてない?」
「将来の夢……」
───そうだ。図書室で、そんな話をした。
「みゃーこに将来の夢を聞いたらさ、"教師に興味がある"って言ってたんだよ」
「……教師……」
「そう。俺を見てそう思ったって、言ってくれて嬉しかったなあ」
自分のことなのに、どこか他人事のような気持ちになるのは、多分自分に教師なんて向いてないって、今の私にはわかっているからだと思う。
多分、幼いながらに修斗さんの姿に憧れていたのだろう。
優しくて、頼れて、授業もわかりやすい。
修斗さんみたいに、悩んでいる生徒の相談に乗ってあげられるような、そんな教師に、興味があったのだろうか。
自分のことなのに、全然わからないや。