とろけるような、キスをして。
第二章
落ち着く声
「……そうか。野々村さんが辞めてしまうのは会社としては大分痛手になってしまうが……。もう決めたことなら私が止めるわけにもいかないからな。上に通しておくよ」
「ありがとうございます」
「ただ引き継ぎもあるから、すぐにとはいかないと思うからその辺はちゃんと考えておいて」
「はい。わかりました。ありがとうございます。失礼します」
上司である総務部長に頭を下げると、私は自分のデスクに戻る。
───あれから、一週間が経過した。
東京での暮らしは相変わらずで、特別仲の良い同僚もいなければ友達もいない私はルーティンワークをこなして家に帰るだけの日々。
寂しくないと言えば嘘になるけれど、毎日のように先生や晴美姉ちゃんと頻繁に連絡を取っていたため、今までよりは孤独を感じることが少なかったように思う。
あの後、深山先生と晴美姉ちゃんはすぐに高校の教頭先生に話を聞いてくれた。そして教頭先生は快く面接を引き受けてくれ、来月面接のためにもう一度地元に帰ることが決まった。
どうやら今のところまだ求人を出してはいないようで、上手くいけばそのまま採用になるらしい。
世間一般で言うところのコネと言うやつだ。
とんとん拍子に話が進んでいくことに若干の困惑はあれど、これも何かの縁かもしれない。そう思って私も面接に前向きな気持ち。
もう半分決まっているようなものならば、と今の仕事を辞める決心がついた。