とろけるような、キスをして。
数日後。無事に私の退職願が受理された。
「次の仕事は決まってるのかい?」
「まだ確定ではありませんが、知人に紹介してもらえることになっていて」
「そうか。じゃあ退職届書いておいて。人事部に聞けば用紙くれるはずだから。あ、後引き継ぎもよろしく頼んだよ」
「はい。ありがとうございます」
総務部長のデスクを離れ、自分のデスクに戻る。
「野々村さん、辞めちゃうの?」
私の二年先輩の橋本さんが小声で聞いてくる。
「はい。地元に帰ろうと思って」
「そっかあ。……寂しくなるなあ。辞める前にご飯行こうね!」
「はい。ぜひお願いします」
私が入社した時から可愛がってくれている橋本さんの優しさに、何も相談せずに決めたことへの申し訳なさを感じた。
課長に言われた通り人事部に出向き、退職にあたっての書類をいくつか受け取る。
「そっか。離職票も貰わないと……」
転職はやることが山積みだ。