とろけるような、キスをして。
驚きの余り、玉ねぎをポロッと落としそうになって慌てて抑える。
「……え?」
聞き間違いかと思って聞き返すと、先生はもう一度
『俺ん家、一部屋空いてるから泊まっていいよ。もちろん金いらないし。それなら何も気にしないで土日もいれるでしょ』
と爆弾発言をする。
もう、カレールーの在処など考えている場合じゃない。
「先生、自分が何言ってるかわかってる?」
意味も無くカートごとスーパーの端に寄り、小声で聞く。
『もちろんわかってるよ。安心して。鍵付きの部屋だし、同意無く手出したりしないから』
……それはつまり、同意があれば手を出すということでしょうか。
……まぁ、先生に限ってそんな間違いを犯すとも思えないけど。
『どう?』
「いや、どうって言われても……」
普通、ダメでしょ。
いくら卒業していてもう直接的に教師と生徒ではないとは言え、……ダメでしょう。ほら、倫理的にというか……道徳的にというか……あれだよ、あれ。
一ミリも考えていなかった案に、私の方が動揺した。もはや頭の中は軽くパニックだ。
電話をしながら頭を抱えている私を、通り過ぎる人が皆不思議そうに見つめてくる。
それに恥ずかしさを感じている余裕も無い。