とろけるような、キスをして。
「荷物はどうせ俺ん家に持っていくんだし、貴重品以外はそのまま車に乗せといていいよ」
「わかった」
空港から一時間半ほど。私は先生の運転で、一ヶ月ぶりの母校に足を踏み入れた。
約束の時間よりも少し早かったものの、先生が事前に連絡をしていたようで着いたらすぐに面接をすることに。
職員室の扉を開けると、中にいた教師たちが一斉にこちらを見た。
「あ、深山先生。おかえりなさい」
一番入り口側にいた女性教師が先生に声を掛ける。
「ただいま戻りました。あれ、教頭知りません?」
「教頭なら今応接室でお二人が来るのを待ってると思いますよ」
「ありがとうございます」
先生に倣って私も小さくお礼を告げる。
女性教師はにこやかに私に会釈してくれた。
他の先生方は試験作りに集中しているのか、特にこちらを見向きもしない。
やっぱり私、来るタイミング間違えたんじゃ……。皆すごく忙しそう。
しかしこのまま帰るわけにもいかないため、音を立てないようにその横をすり抜けて応接室へ向かう。
「教頭、野々村さんがいらっしゃいました」
先生が応接室のドアをノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。
「行っておいで」
先生に促されて中に入ると白髪混じりの男性が立ち上がって私に一礼した。