とろけるような、キスをして。
「仕事の話はこのくらいにして。……聞くところによると、野々村さんはここの卒業生だとか。四ノ宮先生のご親戚だそうで」
「はい。従姉妹です。深山先生にも三年間お世話になりました」
「そうでしたか。私は三年前にこの学校に来たばかりなんですよ。なので───」
田宮教頭との面接は本当に名ばかりのもので、最初こそ仕事の話だったものの、途中からは雑談も交えながら終始穏やかに進んだ。
もちろんメインは仕事についての話。しかし最後の方はむしろ深山先生の話や晴美姉ちゃんの話で盛り上がり、学生時代の話ばかりをしていた気がする。
「おっと。ついつい喋りすぎてしまった。すみません。話好きなもので」
「いえ、私もいろいろなお話が聞けて嬉しかったです」
気が付けば応接室に入ってから一時間ほどが経過していた。
田宮教頭との会話に夢中になりすぎて、お互い時間を忘れていたよう。
「こちらとしては、是非とも野々村さんにうちで働いてもらいたいと思っています」
「ありがとうございますっ。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「ははっ、ありがとう。助かるよ。じゃあ本格的にこっちに戻ってくる日が決まったら、深山先生か四ノ宮先生経由で良いので連絡ください」
「わかりました。ありがとうございます」
コネのおかげかタイミングのおかげか、無事に転職先も決まった私は、田宮教頭に礼をしてから応接室を出た。