とろけるような、キスをして。
「うん。昼食ってないからめちゃくちゃ腹減ってるんだよね。みゃーこも疲れてるだろ?早めに食べてゆっくりしよう。俺も手伝うよ」
「いや、泊めてもらうお礼なんだから先生はそっちで休んでて」
先生が手伝っちゃったら、私のお礼の意味が無くなる。それじゃあ本末転倒だ。
先生がお昼を食べていないと言うのを聞いて初めて、私もお昼を食べていないことに気が付いた。
片付けに夢中になりすぎて空腹すら感じていなかったようだ。
気が付いてしまうとなんだか急にすごくお腹が空いてきた。我ながらわかりやすい身体をしている。
「じゃあここで見てて良い?」
そう言って指差したのは対面キッチンの前にあるカウンター。そこに置いてある椅子に腰掛けてこちらを見つめてくる。
「え、作ってるところを?」
「うん。見たい」
見られて減るものじゃないけれど、作っているところをまじまじと見られる経験なんてないからそわそわしてしまいそう。
しかし先生はキラキラした目で"見たい"と言ってくるから、断るのも忍びない。
「……あんまりじろじろ見るのはやめてね」
「やった、邪魔にならないように見てるから安心して」
宣言通り、カウンターの向こうから静かにこちらを見てくる先生。
しかし包丁を使おうとしている時までじーっと 見てくるものだから、逆にやりづらくなって手元が狂い、少し指を切ってしまった。