とろけるような、キスをして。



 その間、私はバラエティ番組に切り替わったテレビをボーッと眺めていた。


そして次第にまた睡魔が襲ってくる。


思っていた以上に身体は疲れていたらしい。いつもならまだまだ起きていられるのに、眠くて眠くて仕方なかった。


 滲んだ涙を指で拭きながら、どうにか寝ないように目を開こうとする。



「みゃーこ?やっぱ眠い?」



 もうそんなに時間が経ったのだろうか。あっという間に上がってきた先生は、私が寝そうになっているのを見ながら首に掛けたタオルでガシガシと頭を拭いていた。


また欠伸をしながら頷くと、



「おいで」



と隣に座った先生が私の背中から腕を回して引き寄せる。


 コテン、と先生の肩にこめかみが当たる。


そのまま一定のリズムで私の腕の辺りをトントンとしてくれる手に、睡魔がさらに襲ってきた。


 子ども扱いされているようなそんな気もするけれど、その手が優しいからあまり気にならない。


むしろ、そのリズムが心地良く脳に響く。



「……みゃーこ、疲れてんのに無理させてごめんな。ハンバーグ、美味かったよ。ありがとう」



 耳元で囁くような声が聞こえ、ゾワリとした耳を隠すように身を捩る。


すると、先生からまた甘い香りがした。香水だと思っていたこの香りは、先生自身のものだったのだろうか。


 半分寝かかりながら、その香りのする方に擦り寄るように顔を近づける。



「……みゃーこ?……ははっ、マジで猫みたいだな」



 先生の笑い声が、子守唄のよう。



「……おやすみ」



 柔らかなその声を聞きながら、夢の中へ落ちていった。


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