とろけるような、キスをして。



 ───夢を見た。


 それは、私がまだ高校生だったころの、夢。


私はその日、旧校舎にある図書室にいて。


そこでグラウンドの方を眺めていたら、先生が来た。



"みゃーこは、将来何になりたいの?"


"なにいきなり。進路指導?"


"ここでもよく勉強してるじゃん。成績も良いし。俺の授業まともに聞いてくれるのみゃーこだけだからさ。気になっちゃって"


"確かに先生の授業って、皆遊んでたり寝てたりするね"


"だろ?歳近いからって舐められてんだよ俺。本当まいる"



 そうだ。高校二年生の時だ。夏の暑い日に、先生との進路の話になったんだっけ。



"先生は何で教師になったの?"


"俺?俺はね……高校の頃の担任の先生に、救われたんだよ"


"え?"


"俺、その時進路のことで親と揉めててずっと悩んでたんだけど、その先生がさ、自分の好きなことやれって言ってくれて。自分の進みたい道は自分で決めろって。そうやって生徒の背中を押せる教師の姿に、憧れたんだよ"


"へぇ……。良い先生だね"



 私は、そんな当たり障りのないことしか言えなかった。



"単純な理由なんだけどね。だから俺も、みゃーこにやりたいことがあるならそれを応援したいなって思って"


"……先生、笑わない?"


"もちろん"


"……私ね?────"



 ……あれ、私はあの時、なんて答えたんだっけ?


──
───
────

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