とろけるような、キスをして。
「あ、先生、お疲れ」
「おー。実家じゃなかったんだ?」
「お昼、自分の分用意するの忘れちゃって。久しぶりに大和さんと雛乃さんにも挨拶したくて」
「そっか。……大和、ブレンド一つ」
「はいよ。もうできてるよ」
「さすが」
私の隣に腰掛けた先生は、大和さんからコーヒーを受け取って飲みながら「んで?何の話ししてたの?」と首を傾げる。
「みゃーこちゃんが帰って来たから修斗の機嫌が良かったんだなって話してたんだよ」
「なんだよそれ。俺の話でそんな盛り上がってたわけ?」
お二人の話もしていたけれど、大和さんの顔は完全に面白がっているものだ。先生をからかいたいらしい。
「あぁ。そのブレンドは俺からの激励。修斗、今度こそ頑張んないとな」
「……わかってるよ」
「激励ってさっきから何の話?」
「みゃーこちゃんって、変なところ抜けてるよね?」
「え?」
「みゃーこは知らなくて良いの」
照れたように顔を赤くする先生は、大和さんと雛乃さんにからかわれながらコーヒーを飲み干す。
わけもわからないまま、知らなくて良いと言われたら頷くしかない。
「二人分、いくら?」
先生は当たり前のように私の分まで払ってくれた。
「ちょっと先生、私、自分の分は自分で払うから」
「いいの。俺日曜までみゃーこに財布出させる気無いし。ほら、それ飲んだら行くぞ」
「ちょっと先生!」
「修斗の奴、張り切っちゃって。みゃーこちゃん、愛されてるねー」
「本当。羨ましいくらい」
二人のからかいに返事をしている暇も無い。
私も残りを飲み干すと、ニヤニヤしている二人に挨拶してから先生の後を追いかけた。