とろけるような、キスをして。
「みゃーこ、もう寝るの?」
「う、うん。またソファで寝ちゃって先生に迷惑かけるわけにもいかないし。明日帰るから荷物もまとめないといけないし」
「……ふーん。そっか。わかった。おやすみ」
「おやすみなさいっ」
思いの外、先生はすぐに手を離してくれた。
夜になると、どうしても意識してしまう自分がいた。
先生の甘い香りを思い出してしまう。そして、心臓が激しく高鳴るのだ。
そこまで子どもじゃないし、そこまで馬鹿じゃないからさすがに私でもわかる。
……先生のことを、男性として意識し始めてしまっている。
今までは、先生はあくまでも教師で、そこに性別の垣根など考えたことがなかった。
教師は教師という存在で、それ以上でもそれ以下でもなかったのだ。
それがどうだろう。今、私は先生のことを教師ではなく、一人の男性として見ている。
まさか、私が先生のことを?無性にムズムズしてしまって落ち着かない。
上京してからというもの、男性とそういう関係になったことがほとんど無い。
数人お付き合いをした人はいれど、どれも長くは続かなかったし、ここ数年は特に出会いも無い。恋愛などしてる余裕も無かったというのも理由の一つだが。
誰かからアプローチされることも無ければ、自分からいいなと思えるような男性もいなかった。
部署が女性ばかりというのも大きい。
布団に潜り込んで、ここで過ごす最後の夜を一人でよく考える。
自分の気持ちの変化に頭がついていけていなくて、今日も上手く眠れない。
どうしたものか。そう思っている時に枕元に置いてあるスマートフォンが鳴った。