とろけるような、キスをして。
第三章
夜明け
*****
「……送ってくれてありがとう。じゃあね」
「あぁ。ちゃんと後で電話しろよ?」
「うん。……またね」
「気を付けて」
空港の保安検査場の前で、前回と同じく手を振る。
前回と違う点と言えば、二人の関係性だろうか。
厳密に言えばまだ変わってはいないけれど。確実に昨日までとは気持ちが違う。
私を見つめるその視線から、絶えず私を想ってくれているのが伝わってきて、こっちが恥ずかしいくらいだ。
今朝起きた時、お互いに何も身に付けていない状態で抱きしめ合って寝ていて。
昨夜の情事を思い出し、あまりの恥ずかしさに悶絶した。
"みゃーこ。おはよ"
修斗さんのその寝起きの掠れた声と眩しい笑顔に、心臓を鷲掴みにされたような気がしてから早数時間。
私はまた、東京に戻る。
今日一日、まともに修斗さんの顔を見た気がしない。
見られなかったと言った方が正しいだろうか。
修斗さんはそんな私を見て、"照れてんの?可愛い"と言ってまたキスを落としてきたり、いろいろと大変だった。
……これじゃあ、心臓がもたないよ……。
飛行機に乗ってスマートフォンの電源を切ろうとした時に、メッセージが来ている事に気が付く。
"次会った時に、返事聞くから"
そっと、胸に手を当てる。
メッセージを見ただけで高鳴る鼓動。
昨夜の、あの時間。
嫌じゃなかったし、むしろときめいた。幸せな時間だった。気持ち良くて、私だってたくさん求めたし。
今まで、ああいう行為は男の人が気持ち良くなるためだけのもので、女の人は痛いことの方が多いと思っていた。しかしそれは私の男性経験がそうだっただけで。
昨夜は、私にとって今までで一番幸せな時間だった気がする。