とろけるような、キスをして。
「そっか。頑張ってね。応援してる」
「ありがとうございます」
お礼を告げて、グラスに入ったスクリュードライバーを口に傾ける。
ウォッカ少なめで作ってもらったからか、オレンジの酸味が強くて飲みやすい。
小皿に盛られたカシューナッツを摘んでいると、私を見つめた橋本さんがニヤニヤしながら呟いた。
「最近の野々村さん、すごく笑顔が増えて明るくなったよね」
「えっ。……そうですかね?自分じゃよくわからないです」
初めてそんなことを言われて、驚いてナッツをお皿に落としてしまった。それをもう一度摘んで、口に運ぶ。
「いや、今までも可愛い子だなって思ってたけどね?最近は明るくなってもっと素敵になった感じ。きっと良い恋してるんだろうなって。勝手に思ってた」
「恋、ですか!?」
タイムリーな単語に、私は大袈裟に肩を跳ねさせた。
「あれ?違った?女の子が綺麗になるのは、大体恋してる時だからさ。野々村さんも多分そうなんだろうなって」
女の勘というやつなのだろうか。それにしても鋭い。……いや私がわかりやすかっただけだろうか。
ウィスキーが入ったグラスを軽く回しながら、橋本さんは頬杖をつく。
私は目の前のグラスを見つめた。
「……多分、そうなんだと思います」
この三週間の間に、私は自分でもわかっていた。
これは恋だと思う。私、好きなんだと思う。
いくら卒業したとは言え、教師を好きになるなんて全く想像だにしなかったけれど。
「野々村さん見てるとわかるよ。その相手、すっごく素敵な人でしょ」
「……はい」
そうなのだ。素敵な人なんだよ。
恥ずかしいけれど頷くと、橋本さんは面白そうに口を開く。