どこまでも
「ねえ、……別れてないつもりだったって本当?」

 再会したバーで言われたセリフを思い出す。別れたつもりじゃなかったって、迎えに来るつもりだったって、あれはどこまでが本当なんだろう。

「本当だよ」

 頬を寄せたまま禄朗が答えた。

「最初はアメリカに行って、いつものようにちょっとだけ勉強するつもりだったんだ。でも思いがけず有名な先生に拾ってもらえてさ。毎日目まぐるしくて覚えることも刺激もいっぱいで……こき使われてくたくたで、でも優希がいるからがんばれるって、思って……気がついたら七年たってた」

 ごめんな、と彼は囁いた。

「もっと早く連絡するつもりだったんだけど」
「ほんとだよ」



 待ってろ、と言われたら待っていられた。何年だって信じていられた。手紙の一つ届けてくれれば、それで十分だった。

 なのに勝手に捨てられたと思い込んで他人の優しさに逃げてしまったのは優希の弱さだ。無駄に明日美を傷つけることになってしまった。

「嫌になるな……」

 あまりにも情けなさすぎる。禄朗に依存しすぎていた自分にも、受け止めて支え切れなかった幼さにも。自己嫌悪に膝に顔をうずめた優希に禄朗は囁いた。
 
「一緒にアメリカに行かないか?」
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