どこまでも
あれは大学に入ったばかりのころだった。幼くて人見知りだった優希の前に、突然現れた太陽のような眩しい存在。その求心力はあっという間に人を集め、にぎやかで笑いの絶えないかたまりの中心にいたのが禄朗だった。
その眩しさにくらんでしまったのは、多分優希だけじゃない。
憧れを込めた視線を送っている人がたくさんいる中、たまたま同じゼミで前後に並んだ。話をするようになれたのが、信じられないくらいの奇跡だ。
最初はおどおどと、だけど強い力で禄朗に引き込まれていく。元々にぎやかな場所が苦手でうまく交じりきれない優希に、彼はいつも声をかけてくれた。
写真が好きなんだとはじけるような笑顔で語っていた禄朗。
隣にいれるだけで幸せで__好きだとは言えなかった。恋愛感情だとバレてしまったら、もう笑いかけてはもらえない。だから気持ちを押し隠して、友達でいれたら十分だと言い聞かせていた日々。
__きっかけはなんだったっけ、と記憶をたどっていく。多分あれは、サークルに誘われた時だったと思う。
「優希も一緒に写真サークルに入ろうぜ」
「……サークル?」
垢ぬけなくて引っ込み思案だった優希がたじろぐと、禄朗はおもむろに近づき、顔を隠していた長い前髪をグっとかきあげて「やっぱり!」と叫んだ。
「お前、絶対、美人だと思ったんだよなー」
キラキラとした瞳で、彼は勝ち誇ったように笑った。
「その前髪で顔隠すのやめてさ。もっと、堂々として……視線上げて、背筋伸ばして。心の中でいってみ、ぼくは美人です、って」
「美人って、なにを……?」
「優希のこと!絶対きれいだと思ってた。おれの勘は大当たりだな」
うんうんと一人納得したようにうなずきながら、強く言葉をつなぐ。
「なあ、顔隠すのやめとけって。もったいないから。おれの行きつけの美容室連れってってやるよ。任せろ」
ぐいぐいと腕を引かれ、何が何だかわからないうちにおしゃれな美容室の鏡の前に座っていた。緊張のあまりおどおどとしていても、大丈夫だからと言われると本当に大丈夫な気になってくるから不思議だ。
禄朗は片時も離れず美容師と何やら言葉を交わし、その都度優希は変化していった。彼の望むように作り変えられていく。それは興奮さえ与えてくれる体験だった。
その眩しさにくらんでしまったのは、多分優希だけじゃない。
憧れを込めた視線を送っている人がたくさんいる中、たまたま同じゼミで前後に並んだ。話をするようになれたのが、信じられないくらいの奇跡だ。
最初はおどおどと、だけど強い力で禄朗に引き込まれていく。元々にぎやかな場所が苦手でうまく交じりきれない優希に、彼はいつも声をかけてくれた。
写真が好きなんだとはじけるような笑顔で語っていた禄朗。
隣にいれるだけで幸せで__好きだとは言えなかった。恋愛感情だとバレてしまったら、もう笑いかけてはもらえない。だから気持ちを押し隠して、友達でいれたら十分だと言い聞かせていた日々。
__きっかけはなんだったっけ、と記憶をたどっていく。多分あれは、サークルに誘われた時だったと思う。
「優希も一緒に写真サークルに入ろうぜ」
「……サークル?」
垢ぬけなくて引っ込み思案だった優希がたじろぐと、禄朗はおもむろに近づき、顔を隠していた長い前髪をグっとかきあげて「やっぱり!」と叫んだ。
「お前、絶対、美人だと思ったんだよなー」
キラキラとした瞳で、彼は勝ち誇ったように笑った。
「その前髪で顔隠すのやめてさ。もっと、堂々として……視線上げて、背筋伸ばして。心の中でいってみ、ぼくは美人です、って」
「美人って、なにを……?」
「優希のこと!絶対きれいだと思ってた。おれの勘は大当たりだな」
うんうんと一人納得したようにうなずきながら、強く言葉をつなぐ。
「なあ、顔隠すのやめとけって。もったいないから。おれの行きつけの美容室連れってってやるよ。任せろ」
ぐいぐいと腕を引かれ、何が何だかわからないうちにおしゃれな美容室の鏡の前に座っていた。緊張のあまりおどおどとしていても、大丈夫だからと言われると本当に大丈夫な気になってくるから不思議だ。
禄朗は片時も離れず美容師と何やら言葉を交わし、その都度優希は変化していった。彼の望むように作り変えられていく。それは興奮さえ与えてくれる体験だった。