どこまでも
通常通りに帰宅すると、玄関へ迎えに出た明日美は心からほっとした表情を浮かべた。
「ゆうちゃん、おかえり!」
「ただいま」
「今ご飯作ってるところ。先にお風呂にする?」
「お風呂もらってもいい?」
「了解!ゆっくり入ってきて」
いつも通りニコリと笑う明日美に微笑み返し、バスルームへ向かう。ワイシャツを脱いだ体には、まだしっかりと禄朗の痕が刻まれていた。
筋の浮き出た大きな手が体中をまさぐっていく。味わうように優希の体に唇を這わせ、噛み痕をつけていく。吸われて、ざらりとした舌が全身を舐めていく。そのひとつひとつを思い出すだけで、全身がうずいてしまう。
気持ちを切り替えなきゃと言い聞かせ、風呂から出ると夕食の美味しそうな匂いがした。
「なんか豪華だね」
「うん、この前の仕切り直し」
「そっか。……ごめんな」
向かい合って座って食事に手をつけた。口に運ぶと、ジュージーな肉の味がいっぱいに広がる。
「美味しい」
「ふふ」
優希の美味しそうな顔を見て、明日美は嬉しそうに笑う。本当にいい人だな、とまぶしい気持ちで明日美をみつめた。
こんなに可愛くて優しくてよくできた女の人なんかそういるものじゃない。人間関係に疎い優希にでもわかる。
なんで優希なんかと結婚しようと思ったのか、いまだに不思議でならない。不器用でろくでもない優希に、普通の人生を歩ませてくれる明日美には感謝してもしきれない。彼女がいなきゃ、今頃どうなっていたのか想像もつかなかった。
それなのに、平気で明日美を裏切っている。今この瞬間でさえ、ここにいない禄朗でいっぱいになっているというのに。健気な彼女に胸が痛んだ。
「ごめんね」
優希はもう一度謝った。謝ったってどうしようもないことは百も承知で、そうすることが自分を楽にすることもよくわかっていた。どこまでもずるい男だ。
だけど明日美は首を横に振り、ニコリと笑った。
「いいよもう。それよりね、わたし、ゆうちゃんにいわなきゃいけないことがあるの」
心なしか上気した顔で、明日美は優希を見ていた。ぞわり、としたものが背筋を駆け抜けていく。
聞いちゃいけない予感がする。聞いてしまったら戻れなくなるような、なにか。
「ゆうちゃん、おかえり!」
「ただいま」
「今ご飯作ってるところ。先にお風呂にする?」
「お風呂もらってもいい?」
「了解!ゆっくり入ってきて」
いつも通りニコリと笑う明日美に微笑み返し、バスルームへ向かう。ワイシャツを脱いだ体には、まだしっかりと禄朗の痕が刻まれていた。
筋の浮き出た大きな手が体中をまさぐっていく。味わうように優希の体に唇を這わせ、噛み痕をつけていく。吸われて、ざらりとした舌が全身を舐めていく。そのひとつひとつを思い出すだけで、全身がうずいてしまう。
気持ちを切り替えなきゃと言い聞かせ、風呂から出ると夕食の美味しそうな匂いがした。
「なんか豪華だね」
「うん、この前の仕切り直し」
「そっか。……ごめんな」
向かい合って座って食事に手をつけた。口に運ぶと、ジュージーな肉の味がいっぱいに広がる。
「美味しい」
「ふふ」
優希の美味しそうな顔を見て、明日美は嬉しそうに笑う。本当にいい人だな、とまぶしい気持ちで明日美をみつめた。
こんなに可愛くて優しくてよくできた女の人なんかそういるものじゃない。人間関係に疎い優希にでもわかる。
なんで優希なんかと結婚しようと思ったのか、いまだに不思議でならない。不器用でろくでもない優希に、普通の人生を歩ませてくれる明日美には感謝してもしきれない。彼女がいなきゃ、今頃どうなっていたのか想像もつかなかった。
それなのに、平気で明日美を裏切っている。今この瞬間でさえ、ここにいない禄朗でいっぱいになっているというのに。健気な彼女に胸が痛んだ。
「ごめんね」
優希はもう一度謝った。謝ったってどうしようもないことは百も承知で、そうすることが自分を楽にすることもよくわかっていた。どこまでもずるい男だ。
だけど明日美は首を横に振り、ニコリと笑った。
「いいよもう。それよりね、わたし、ゆうちゃんにいわなきゃいけないことがあるの」
心なしか上気した顔で、明日美は優希を見ていた。ぞわり、としたものが背筋を駆け抜けていく。
聞いちゃいけない予感がする。聞いてしまったら戻れなくなるような、なにか。