どこまでも

 『来週にはアメリカに帰る』と禄朗から連絡が入ったのは、夕方近くだった。

 メールの文面のアメリカの文字に、心臓がギリっと痛む。ついにこの時が来たのだ。

 あまりにも普通に会えていたから、もしかしてこのままの関係でずっといられるのではないかと甘く考えてみたりもしたけど、やはり現実は変わらないらしい。

 会えるかと都合を聞かれ、ためらいもなくYESと答える。明日美との約束を反故することに慣れてきてしまった。

 『今日も急な残業が入った』とメールを出すとすぐに返信の電話がかかってきて、がっがりした明日美の声に胸が痛んだ。

「どうしてもダメなの?」
「うん、ごめんな。今日も遅いからまた今度にしよう」
「わかった。あまり無理しないでね」

 今朝のうきうきとした明日美を思い出すと帰ってあげたい気持ちもあるけど、どうしても禄朗のほうを優先してしまう。

 いっそ、愛想を尽かせてくれればいいのにと自分勝手なことを思った。
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