どこまでも
しばらく茫然と携帯を握り締めていたが、ふと我に返り急いで明日美にメールを送った。約束を反故することに申し訳ないと思う間もなかった。
『ごめん。仕事で急用が入って今日行けなくなりました』
すぐさま返ってきた返事にも上の空にならないように答える。
『どうしても抜けられなくて。申し訳ありませんがレストランへは、お母さんと行ってきてください』
近くに住む明日美の母親とは懇意にしているのだから、たまには2人で美味しいものを食べてきてもらえればいい。
ほんの少し間があって『仕方ないね。母と行きます』と返事が来た。ほ、と胸を撫でおろす。
さっきの受話器越しの禄朗の声がいつまでも耳の奥に残っていた。
「優希」と名前を呼ぶときにほんの少し甘くなるのは昔と変わらない。
その甘い声で呼ばれるだけで、消したはずの体の奥のおきびに火がともる。じんと心が熱くなる。
禄朗、と小さく呟いてみる。
それは優希の心を動かすには十分な響きを持っていた。
『ごめん。仕事で急用が入って今日行けなくなりました』
すぐさま返ってきた返事にも上の空にならないように答える。
『どうしても抜けられなくて。申し訳ありませんがレストランへは、お母さんと行ってきてください』
近くに住む明日美の母親とは懇意にしているのだから、たまには2人で美味しいものを食べてきてもらえればいい。
ほんの少し間があって『仕方ないね。母と行きます』と返事が来た。ほ、と胸を撫でおろす。
さっきの受話器越しの禄朗の声がいつまでも耳の奥に残っていた。
「優希」と名前を呼ぶときにほんの少し甘くなるのは昔と変わらない。
その甘い声で呼ばれるだけで、消したはずの体の奥のおきびに火がともる。じんと心が熱くなる。
禄朗、と小さく呟いてみる。
それは優希の心を動かすには十分な響きを持っていた。