どこまでも
 俯き怯える優希にAllyは小さく息を吐き、頭を下げた。

「本当にあの時はごめん。反省してるし、もう二度としない。約束する」

 おずおず視線を向けると、真剣な表情のAllyの視線にかちあった。違う意味で心臓がばくりと音を立てる。

 引きこまれそうだ、とAllyの薄い色素の瞳から目が離せなくなった。

 一度は体をつなげ、気持ちさえひとつになったと勘違いしてしまいそうな体験をした相手だ。好きでもないのに触れあう場所から通じ合い、同じ存在のように思えたあの不思議な瞬間。

 Allyの持つ吸引力に引きずり込まれそうだ。けれど必死に踏みとどまり、ゆるゆる頭を振った。
 
「わかった。でも禄朗のことを聞かれても答えられることは何もないよ。きみのほうがぼくより詳しいだろ?」
「そっか」

 Allyは少しだけ考え込む風にしてから、「ちょっと時間もらえるかな」と尋ねた。

 さすがに優希も懲りていたから、すぐに答えられなかった。彼を信用しきるほどお人よしでもないし、これも何かのたくらみなのかと勘繰ってしまう慎重さもある。優希の逡巡を悟ってか、Allyは困ったようにうなずいた。

「OK。じゃあ、公園でちょっとだけ話せる?」
「わかった」

 さすがに人目のある公の場で何かをしようとは思わないだろう。なるべく賑やかな場所を選び、少しでもおかしいそぶりを見せたら逃げるか助けを呼ぼうか。そう決めて頷くと、Allyは初めて安心した笑みを浮かべた。

 並んで歩きだすとAllyの身長はすでに優希を追い越し、仰向かなければ顔も見られない。以前もモデルのように綺麗だと感心したけど、今はさらに大人の色気も感じさせる。

「元気だった?」
「まあ、なんとか」

 なんでこんなことになっているのか理解できないまま、ぼそぼそと会話を続ける。
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