どこまでも
「いつ帰ってきたの?」
「さっき」
「さっき?」

 思いがけない返事に優希は飲んでいたお酒を吹き出しそうになる。

 いくらなんでも、さっきってことはないだろう。だが禄朗は航空チケットを証拠だといわんばかりに目の前に差し出した。

 確かに日付は今日で、つい数時間前に日本に到着している便だった。

「ほんとだろ。で、ここに来て、おまえの連絡先探して__勝手に電話変えただろ」

 探すの大変だったんだぞーと、彼は唇を尖らせた。

「とりあえず同級生の知ってるやつ全員にかけた」
「全員に?!」
「うそ。そんなにかけてないけど、でも懐かしかったなー」

 不満そうにしながらも顔は笑っている。

「同窓会するかって話にもなったから、おまえも来るだろ?」
「考えとく」









 優希と禄朗は大学の同級生だった。

 一緒にいたころを思い出して切なさが襲ってくる。ただ幸せで満たされて世界は自分のためにあると信じてしまいそうな日々。同時にすべてを失った時の喪失感も、もれなくセットでついてくる。

 勝手に優希を捨てて海外に行ってしまったことも忘れたかのような態度にため息をついた。

「お気楽だな」
「そうか?」
「人の気も知らないでさ」
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