どこまでも
「一回休もうか」

 西部映画に出てきそうなドライブインに車を止め、中に入る。イメージを裏切らない髭もじゃの男が、カウンターの中で忙しそうに立ち働いている。

 Allyは早速コーヒーを注文するとカウンターに腰掛け、優希も誘った。

「まだ長いから休憩ね」
「運転変わろうか?」
「大丈夫だよ。それに運転できるのかよ」
「これでも免許くらいある」

 ほとんどペーパーだけど、とつけ足すとやっぱりねと頷いた。

「優希に運転ってイメージないからね。助手席が似合うよ」
「どういう意味だよ」

 膨れてみせるとAllyは楽し気に身体を揺らした。

「いいね、こうやって話せる友達ってほしかったから。ぼくって、アレだったし……なかなか友達ができなくてさ。なんか楽しい」

 嬉し気にするAllyを見ていると、悪い気はしなかった。「Allyは運転が上手だよね」と照れ隠しのように褒める。

 Allyの運転はストレスを感じさせない、安定した走りを見せていた。ブレーキの時も静かで負担にならない。あまりしゃべらずカーラジオからゆったりとした曲が流れているのは、禄朗ととても似ていた。彼も余計なことはしゃべらず、景色と音楽を楽しむのが好きだったから。

「Allyと禄朗はタイプが似てるね」

 隣に座りながらそういうとAllyはくすぐったそうに笑い、「憧れの人だからね」と答えた。

「禄朗のことが本当に大好きなんだ。彼みたいになりたくて、子供のころから真似ばかりしていたよ」
「悪いところも真似してた?」
「そう。でもタバコはあまり好きじゃなかったかな」

 くすくすと笑いながら、Allyはコーヒーに口をつけた。

「それにしても禄朗はどこに消えたんだろうな」
「……うん」

 なんの手かがりもなく探せるものなのか優希だって不安だった。この広大なアメリカのどこかにいるとも限らない。今頃もしかしたら日本に帰っているのかもしれないし、世界のどこかに飛んでいるのかもしれない。

「でも見つける」

 不安に押しつぶされないよう、ぎゅっとマグカップを持つ手に力を入れた。
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