どこまでも
 車に乗り込むと、再び長い道のりを走り出した。単調な景色と規則正しい車の揺れに、次第にまぶたが重たくなっていく。

 日本を発つ前からほとんど眠っていなかったから急激な眠気に襲われて、優希はガクリと頭を落とした。

 ビクリとして目を開ける。Allyの大きな手のひらがいたわるように太ももを撫でた。

「寝ててもいいよ、まだかかるから」
「いや、大丈夫……ごめん」
「ほどんど寝てないんだろ?これからまだ先は長いし、休める時に休めよ」
「でも」

 Allyだって同じようなものだ。機内でも優希を残して眠りにつくことはなかった。

「ぼくはちゃんと寝るときに寝てるから大丈夫」
「……ごめんね」

 逆らえない眠気には勝てず、うとうとと眠りの世界へ足を踏み入れる。意識がすうっと遠くなり、そのまま深い眠りについてしまった。



 次に目を覚ました時、車は賑やかな石畳の通り沿いを走っていた。連なるビル群やきらびやかなショップが連なるストリートには、たくさんの人がせわしげに先を急いでいる。

 身じろぐと運転席のAllyがそれに気がつき、「起きた?」と声をかけた。

「うん、ごめん、結構しっかり寝ちゃった」
「もうすぐ着くよ」

 助手席の窓から見上げるとどこまでも高いビルが乱立し、その上に小さな空が見えていた。

「アメリカって感じ」
「だろうね。よく映画にも出てくる場所だし」
 
 指を折りながら教えてくれたタイトルは聞きなれた有名な作品もあって、ここがその場所なのかと感動する。

「すごい。こんな場所に禄朗はいたんだね」

 様々な人種が闊歩(かっぽう)する大都会。街を歩く誰もが堂々と胸を張り、私の人生を歩いているのよと主張している。ここにいた彼は何を思い、どうやって暮らしていたんだろう。

「禄朗は売れてからもたいして贅沢はしないでずっと同じアパルトマンに住んでいたよ。なじみの人たちと一緒にいるのが楽しかったみたい」

 禄朗らしい、と思った。

 彼はどんな時も自分のスタイルを崩さない。流行りとかこうすべきとか、そういったものには興味がなく、自分の感性に正直だ。

「ここのコーヒーショップもお気に入りだ」
「え、どこ?」

 指をさして教えてもらったお店は老舗らしく、落ち着いた雰囲気の店構えだった。

「後で行ってみようか」
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