どこまでも
Allyの運転する車は滑らかに混雑した街の中を潜り抜け、一軒のおしゃれな建物の前で止まった。
「ついたよ。ここがぼくの住宅兼、事務所」
石畳の歩道から数段高いところに玄関があるレンガ作りの重厚な建物。ドアは磨きがかった木製のしっかりしたものだ。出窓には花が飾られ、古いながらもしっかりと手入れされているのがよくわかった。
「素敵だね」
「ありがとう。さ、入って」
車をパーキングに停め、Allyのあとについてドアをくぐる。
「ただいま」
靴のまま中へ入ると、木がふんだんに使われた広い部屋に続いていた。観葉植物があちこちに置かれ、高い天井のせいか開放感がある。ゆったりと座り心地のよいソファに案内されると、それと同じタイミングで男の人が姿を現した。
「お帰りなさい」
「ただいま、ケイト」
Allyはその人に顔を寄せると、軽く挨拶のキスを交わした。
「紹介するよ、彼が優希。こちらはケイト」
「はじめまして」
Allyの傍らで微笑むケイトと呼ばれた人は、どう見ても日本人だった。背はAllyと同じくらいの長身。ほっそりとした体躯に柔らかな笑みを浮かべている彼は、温厚そうに見える。物腰や雰囲気的に、優希と同世代くらいかもしれない。
「はじめまして、斎藤優希です。突然お邪魔しまして」
「疲れたでしょう?ゆっくりくつろいでくださいね」
にこやかにソファをすすめられ、優希は腰を下ろした。包み込むようなクッションに、ほっと力が抜ける。
「今コーヒーを淹れてきます」
ケイトは軽やかに奥のキッチンへ向かい、Allyは優希と並んで腰を下ろした。
「今日はとりあえず休んでもらって、明日からどうするか考えよう」
「そうさせてもらおうかな。ところでこの近くにいいホテルがあるかな。まだ予約もしていなくて、急で悪いんだけど」
とにかくアメリカに向かおうと急いでここまできてしまった。
Allyはパチパチと瞳をしばたかせると、「ここに泊まればいいじゃん」と当然のように言った。
「ここの上の階は住宅スペースでさ。空いてる部屋もあるし、使えばいいよ」
「でも……」
ここまでくるのだけでもかなり甘えてしまった。これ以上迷惑をかけたくもないと口ごもる。ちょうどその時、香ばしいコーヒーの香りを連れてケイトが戻ってきた。
「ついたよ。ここがぼくの住宅兼、事務所」
石畳の歩道から数段高いところに玄関があるレンガ作りの重厚な建物。ドアは磨きがかった木製のしっかりしたものだ。出窓には花が飾られ、古いながらもしっかりと手入れされているのがよくわかった。
「素敵だね」
「ありがとう。さ、入って」
車をパーキングに停め、Allyのあとについてドアをくぐる。
「ただいま」
靴のまま中へ入ると、木がふんだんに使われた広い部屋に続いていた。観葉植物があちこちに置かれ、高い天井のせいか開放感がある。ゆったりと座り心地のよいソファに案内されると、それと同じタイミングで男の人が姿を現した。
「お帰りなさい」
「ただいま、ケイト」
Allyはその人に顔を寄せると、軽く挨拶のキスを交わした。
「紹介するよ、彼が優希。こちらはケイト」
「はじめまして」
Allyの傍らで微笑むケイトと呼ばれた人は、どう見ても日本人だった。背はAllyと同じくらいの長身。ほっそりとした体躯に柔らかな笑みを浮かべている彼は、温厚そうに見える。物腰や雰囲気的に、優希と同世代くらいかもしれない。
「はじめまして、斎藤優希です。突然お邪魔しまして」
「疲れたでしょう?ゆっくりくつろいでくださいね」
にこやかにソファをすすめられ、優希は腰を下ろした。包み込むようなクッションに、ほっと力が抜ける。
「今コーヒーを淹れてきます」
ケイトは軽やかに奥のキッチンへ向かい、Allyは優希と並んで腰を下ろした。
「今日はとりあえず休んでもらって、明日からどうするか考えよう」
「そうさせてもらおうかな。ところでこの近くにいいホテルがあるかな。まだ予約もしていなくて、急で悪いんだけど」
とにかくアメリカに向かおうと急いでここまできてしまった。
Allyはパチパチと瞳をしばたかせると、「ここに泊まればいいじゃん」と当然のように言った。
「ここの上の階は住宅スペースでさ。空いてる部屋もあるし、使えばいいよ」
「でも……」
ここまでくるのだけでもかなり甘えてしまった。これ以上迷惑をかけたくもないと口ごもる。ちょうどその時、香ばしいコーヒーの香りを連れてケイトが戻ってきた。