どこまでも
「ビックリさせたかったし、寂しがらせたかったから」
「……おい」

 酷い男だなーと禄朗は肘でつつきながら楽しそうに体を揺らした。

「憎たらしい」
「お互い様だよ」

 もう禄朗だけを見つめて彼のためだけに生きていた自分ではないのだ。もうあのころとは違う。




 揺れかける気持ちを飲み干すようにグっと一息飲み干し、お代わりを頼んだ。アルコールが全身に回っていく。

「もう禄朗の知ってるぼくじゃないんだよ。七年も経てば」

 だからもう、禄朗のためだけに生きていた優希とは違う。自分に言い聞かせるように声を出したが、彼は含むような笑みを浮かべた。

「七年ねー、早かったな。あっという間だった。つい最近ここで一緒に飲んでた気分だからなんかおかしいのな」

 くくっと可笑しそうに笑いながら、突然優希の腕を掴みひねりあげた。瞳が獲物を見つけたように細く光る。

「これ、どういうこと?」
「どういう、って……」

 優希の左手の薬指に光るものを禄朗はそっとなぞった。武骨で長くて繊細な指が優希の指の間をたどる。ゴクリとのどが鳴った。

「そのまんまの意味だよ。結婚したんだ」
「へえ?結婚ねえ、おれは別れたつもりなかったんだけどな」
「……えっ?」
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