茨ちゃんは勘違い
見れば、プールのど真ん中で茨が溺れている。

あの必死のもがきよう……どうやら事態は結構ヤバめなようだ。

それを見た木更津は安部が発しているアンモニア臭を瞬時に忘れ、勢いよく飛び込んだ。

「城山さんっ!!」

男らしく助けに向かう木更津を半分放心状態になりながら、呆然と安部が見届ける。

この間、安部の脳内では物凄い速さで思考処理が成されていた。

(──やべぇ、漏らしちゃったよ高二にもなって──)

(──しかしあの男、あんな不細工女を助けに行って何の得があるというのだろう。最高に物好きだな──)

(──それよりどうしよう、この状態。下半身がエライ事に。きっと明日からは、スカトロ安部とか安部スカトロとかってアダ名が付くんだろうな。僕の青春始まってもいないのに終わったな──)

(──ママン、こんな股間をびしょ濡れにした僕を、息子を許してくれますか──)

(──びしょ濡れ──)

(──待てよ。まだ、助かる道はある!!──)

コンマ三秒で結論に辿り着くと、安部は木更津の後を追うようにしてプールに飛び込んだ。

(──イケる!まだ僕は諦めないぞ!!──)

茨ではなく、自分自身を助ける為に、安部は必死に泳ぎ出した。
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