茨ちゃんは勘違い
「私がね……茨ちゃんを……」
「茨ちゃん!!」

自分がしでかした事を素直に白状しようとした畑山を庇い、桜と百合絵が言葉を遮る。

「私達でふざけあってたら、茨ちゃんが足を滑らせてプールに落ちちゃったんだよ!」
「そ、そうそう!」
「あ~~」

無茶苦茶な二人の誤魔化しに、木更津と安部がギョッとした顔をするが、そこは鮮やかにスルー。

なにより、恐怖と衝撃によるものだろうか、茨が事故前後の記憶を吹っ飛ばしていて、何故か妙に納得しているので、話をややこしくするより、オブラートに包んだ方が良いと二人は思った。

「白石さん……住吉さん……」

畑山が呼び掛けると、二人は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で囁いた。

(先輩、あんま気にしないで下さいよ)
(そーですよ。元を辿れば茨ちゃんが悪いっちゃあ悪いんだし、あまり気にする事無いですよ)
(……ありがとう)

畑山が、軽く頭を下げる。

さて、これにて一件落着、といきたいところだが、茨を救ったのにも拘わらず、女性陣に置いてきぼりを食らっている男子二名が、何かを言いたそうな顔をしていた。
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