茨ちゃんは勘違い
心中穏やかではないのか、険しい表情を浮かべたまま、木更津の顔をガン見している。

そうだよな……こんな経験初めてだもんな。

きっと、喜んでいいのやら奇声を上げて舞踊ればいいのやら、本人も戸惑っているのに違いない。

しかし、百合絵の推測は大きく外れている。

というより、プールの大惨事、救出劇、何故か木更津と茨が良い感じと、瞬く間に衝撃が重なり過ぎて、感覚が麻痺しているからなのか。

百合絵は完全に忘れてしまっていた。

城山茨がどういった人間であるかという事を。

茨はしばし地面を見つめ、唇をキュッと噛み締めると、再び木更津の方を向いて小さく呟いた。

「アタシの……」
「え?」

ボソボソ喋っているので、聞き取れない。

「なんだい?」

木更津が聞き返した。

次の瞬間。










「アタシのファーストキッスを、返せぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇっ!!!!」










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