茨ちゃんは勘違い
(な──)
(なななな──)
(なななななななな──)

女子三人は、ほぼ同時に声を荒げた。

「「「な、ん、で、す、とぉぉおぉぉっ!!?」」」

一番ビックリしているのは木更津。

面食らうというのは、この事だろう。

「アンタねぇっ!アタシのファーストキッスは、アタシを宇宙一大事にしてくれて宇宙一愛してくれて宇宙一アタシも愛せる相手に捧げられるよう、常日頃キシリトールガムを噛んで、朝昼晩はお口クチュクチュモンダミンして、時折手鏡で歯並びのチェックもして、勿論歯の矯正もしたし、んでもってんでもって、くまのブーさんを相手に練習までして、青春の一頁を鮮やかに刻めるように準備を怠らなかった大切な大切な大切なファーストキッスだったのにぃいぃぃっ!!!な・ん・で、アンタ何かに奪われなくちゃいけないのよっ!どーしてくれんのよっ!保険下りんの?下りないわよ!!!ナニコレ、どうオトシマエつけてくれるわけぇえぇぇぇっ!!??時間戻せんの??戻せないわよね???戻せるもんなら戻して欲しいけど、んな超能力を身に付ける暇があったら、世界遺産並のアタシの唇の感触を二秒、いや一秒、いやいやコンマ三秒で忘れ去る努力をしなさいよ!!ねぇアンタちょっと聞いてんのっ!!!!」

茨は、息継ぎ無しでここまで捲し立てた。

相槌を打つ暇も無い。
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