茨ちゃんは勘違い
「いや、え、あの、その……」

茨の鬼の形相とあり得ないぐらい早口なのに全く噛まない滑舌に気圧され、木更津はしどろもどろになった。

「はぁっ!?アンタ自分が何したか理解してんのっ!?命より大事な乙女の貞操を奪ったも同然の事をしたのよっ!?」

茨の腹の虫はおさまらない。

命より大事な~~のくだりは、最早文句のつけどころも無いぐらいウザい。

百合絵は我に返ると、至極冷静に状況を把握した。

ああ───そうだった。

この人、こういう人だった。

自分に、全く根拠の無い自信を持ち、有り得ないぐらい我を通し、極限な迄に研かれたその持論は、外内共に醜く、色んな意味で近寄りがたい、いや近寄りたくないそんな女。

周りを振り回すだけ振り回して、自分が為出かした事の大きさも、本人にしてみれば些細な事。

自分一番、自分最高、自分大好き!

そんな女、だった。

百合絵は大きく溜め息を吐くと、興奮している茨を宥めようと近寄った。
< 117 / 224 >

この作品をシェア

pagetop