茨ちゃんは勘違い
百合絵は、悔しいし、決して口には出したくなかったが、鮮やかに彩られた照明にも負けない太陽の陽射しを浴びながら、街を闊歩する「あべっく」が羨ましくて仕方が無かった。

勉強という、学生として真っ当な職務を選択出来ないのであれば、せめてお隣の憧れの人と───晃さんとお手て繋いでニヤニヤ笑い合いたい───思わず、吐きすぎて色が付いてしまいそうな溜め息が溢れてしまう。

「さっ、行こう!次は何処を見に行こうかな~。あ!百合ちゃんまだあの辺入ってないから行ってみよ!」

よりによって同性と一緒……それも駄目押し二点タイムリーツーベースヒットと言わんばかりの、茨と、か……。

しかも、こいつには異性との予定があり、自分には無い。

どんな世の不公平だ、これは。

憂鬱を通り越して鬱々な百合絵は、返事をする元気も無くし、無言で茨と共に喫茶店を後にした。
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