茨ちゃんは勘違い
もうこの頃になると、桜も百合絵が茨に対して、どういう風に思っているかを把握し、また、百合絵も包み隠さず話すようになっていた。

サンドバックだけが心の拠り所だった百合絵にとって、桜はかけがえの無い捌け口───いや、友人になっていたのだった。

まぁ、付き合わされている桜は少々困っているようだったが、苦痛という程でもなく、寧ろ友人としてそれぐらい聞いてあげるのが当たり前と、広い心で接していた。

「んー、でも……」
「でも?なに?」

桜が、弁当の蓋を閉め、包みを戻しながら何かを言い掛けたので、百合絵がそれに反応し、聞き返す。

「でも、やっぱ百合絵ちゃんは茨ちゃん想い、ていうか、友達想いだと思うよ?」
「友達想いって言われるのは嬉しいけど、茨想いって言われるのはちょっと……」

心底嫌そうな顔をして、舌を出して「ウゲー」とか言ってみる百合絵。

だが、それは照れ隠しなのかもしれないと桜は思った。

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