茨ちゃんは勘違い
全身黒ずくめのスーツを身に纏い現れた、一年B組の女教諭は、教室に入ってくるなり生徒に目もくれず、黒板に向かって白のチョークで名前を書いた。



『黒酉須美代(くろとりすみよ)』



片仮名でルビをふると、とても卑猥な感じな気がするのは、気のせいだ(作注※いや、マジで…てきとーに名前作ってから気が付いたのです)。

黒酉は、落ち着きのない生徒達の方へ向き直ると、無表情にこう言った。



ザワザワ…



「黙れ。騒ぐな」



ザワ…



「騒ぐな、と言っている」

冷血極まりない、聞いた者を確実に押し黙らせる何とも言えない迫力のある威圧感でもって、生徒を沈黙させた。

しかし、若者の幼児化の進行、反骨精神溢れる世代が蔓延している時代である。

偏差値の高い低いは関係無く、一人か二人は確実に教師の話に聞く耳を持たないものなのだ。

一年B組に新入してきた生徒の中にも、ヤンチャ根性丸出しの者が居た。

「うぜー…」

ボソリと呟いた一言に、黒酉は眉毛を軽く上げて反応し、目線を変えずに訊いた。

「今、余計な一言を言った者は手を上げろ」

静かになっている生徒達の中、一人の男子生徒が手を上げて言った。

「俺が言いました~『うぜー』って、言いました~」

中途半端に頭が良く、中途半端に度胸があるから、こんな態度が取れるのであろう。

挑発する男子生徒を見るなり、黒酉は何も言わずにツカツカと近付いていった。
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