茨ちゃんは勘違い
「いいか、小童共。このクラスは私の支配下にある。私の命令は絶対であり、逆らおう等と考えない事だ」

ああなりたくなければ、という意味を込めて、黒酉は床に転がった生ゴミのような生徒に視線を送った。

教室内で生唾を飲み込む音がハモる。

「八時半から、体育館で入学式が始まる。無駄口を叩かずに、さっさと移動し、整列していろ。いいな」

『はいっっ!!』と、生徒達が、一斉に返事をする。

さっきので、完全に恐怖を刷り込まれたせいか、生徒達の反応は素直で大変宜しい。

「新一年生だからといって、甘えるなよ…嘗めた真似をすれば…」

黒酉は親指を立てると、ゆっくり真下に向かって下ろした。

「…だ。分かるな?」
『は、はいぃっ!!』

弱冠涙目になっている生徒が何人かいるが、軍隊並の統率がとれた生徒達に満足したのか、黒酉は教室から出て行った。

途端に全体からもの凄い溜め息が漏れ、ハモる。

「…なんという…」

なんという、幕開け。

私の高校生活、始まった瞬間、終わりを告げた。

これが悪夢であって欲しいと、百合絵は心から懇願した。

あり得ない生徒と、あり得ない教師がいる一年B組での学園生活…。

「ゆりちゃ~ん…あの先生怖いよ~ど~しよ~私の顔に傷でも付けられたら~…」

後ろで、この世に生まれた時から失敗した整形みたいな顔のアフォが何か言っているが、百合絵は無視し、明日以降無事に過ごせる事だけを神に祈った。
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