茨ちゃんは勘違い
暫くジッとそのままの体勢でいると、目にかかった髪の毛を掻き分け、徐に携帯を取り出し、連絡先から「晃さん♡」のところで指を止めて、通話ボタンを押した。

何回かのコール音の後、プツリと電話をかけた相手が応答する。

"もしもし?百合絵ちゃん?"

「晃さん...突然電話してゴメンなさい...」

"別にいいけど...百合絵ちゃん、何か元気無いね?何かあった?"

(鋭いなぁ...流石晃さん...)

些細な事だったが、気に掛けてくれた事で嬉しくなった百合絵が応えようとした次の瞬間に晃はこう訊いてきた。

"なんか息が荒いけど...もしかして風邪ひいた?"

百合絵は一気に血の気が引いた。
< 168 / 224 >

この作品をシェア

pagetop