茨ちゃんは勘違い
 …。
 ……。
 ………。
 その日の夕暮時。
 茨は、全く似合っていない白一色のフリフリを身に纏い木更津との待ち合わせ場所である商店街の時計塔広場で佇んでいた。
「遅いわね~」
 待ち合わせ時間は、来てからゆうに一時間はあったのだが、あまりに楽しみにし過ぎたせいか、逆に待っている時間が苦痛になってくる。
 海乃神市内からやや離れた都心部商店街は、イルミネーションで彩られ、至る所で赤と緑のきつねとたぬきではない、クリスマス一色の人々でごった返していた。
 商店街の中心部にある時計塔のある広場では、各々のカップル達がそれぞれの世界を構築し、二人だけの世界に入り浸っている。
 勿論、カップルだけではなく、家族連れや単身の者もいるのだが、何故か日本文化はクリスマス=カップルが繁殖行為に勤しむ=ラブホテルが何件あっても足りないみたいな公式が出来上がっていて、あまり良い印象を受けない。
 しかし、何かと理由をつけてばか騒ぎが出来る日本人は幸せだ。
 寧ろ馬鹿騒ぎをする為にクリスマスは犠牲になったのだと考える事も出来る。
 明るい明るい、雰囲気の中、また一組のカップルが世間と歩調を合わせるように、公然とイチャつきモード全開でいた。
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