茨ちゃんは勘違い
彼こそは、椙村晃。

少し茶色のかかった髪で、それなりに背が高く、今時の若者にしては少し古風な印象を人に与えるが、決して地味では無い。

流行からはやや外れているが、歳より大人びたファッションが反って彼の容姿を引き立たせていて、『イケてるお兄さん』という形容詞がピッタリな感じだ。

彼は百合絵の二つ年上で、百合絵が通う桐海暁よりもランクが上の鳳凰榊という学校に通っている。

何を隠そう、百合絵の幼なじみでもあるのだ。

“入学式、どうだった？今日だったんでしょ？”



ビシッ☆



百合絵は自分で分かっていても、思わず手に力が入ってしまい、携帯のディスプレイが軽くひび割れた。

“百合絵ちゃん…？”

不思議そうに問いかけてきた晃の声に、百合絵はハッと我に還った。

「あは…あははははぁ…あ、ハイ、なんとか……」

無理に取り繕おうとした百合絵だったが、思い出すだけで目の前にある机をひっくり返しそうなので、自制するのが大変だ。

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