茨ちゃんは勘違い
“そう…?なんだか元気無いけど大丈夫?”

心配そうに声をかけてくれる晃に、百合絵はストレスを一瞬で忘れて元気に返事をした。

「ハイ!大丈夫っス!」

何故か男らしく。

気合いを入れすぎた為なのだろうが、自分で今言った言葉の可笑しさに気付き、慌てて言い直した。

「あ、いや、あの、その…大丈夫…です…」

顔を真っ赤にして訂正する姿は、案外萌えるかもしれない。

“ぷっ☆相変わらず面白いね~ユリちゃんは~”

「あ、晃さん!茶化さないで下さいよぅ~」

思わず吹き出した晃に、百合絵は恥ずかしそうに手をブンブン振りながら情けない声を出した。

なんかキャラが違う。

“でも良かった…新しい学校に早く慣れるといいね。鳳凰に入れなかったのは残念だったけど、ユリちゃんならきっと桐海でもやっていけるよ!”

「晃さん…」

晃の優しいエールに、百合絵の胸は次第に高まったが、茨の腹立つ笑顔が脳裏に過り、直ぐに冷めた。

「………はぁ」

“ん?どうしたの?ユリちゃん?………やっぱ何かあったの?”

溜め息を吐く百合絵に、晃が心配そうに訊いてくる。

百合絵は微笑むと、受話器と窓の向こう側の相手に、本音を洩らした。

「違いますよ~…私、やっぱ鳳凰行きたかったな~…って…」

晃さんの居る、とは言わなかった。

“ユリちゃん…”
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