茨ちゃんは勘違い
『城山』という名字を朝っぱらから聞くだけで、憂鬱な気分になり溜め息が出てしまうのは、パブロフの犬並みに条件反射が身についているからだろうか。

見えないけれど、吐く息がドドメ色に染まっている気すらする。

然して気にした様子でも無い桜は、茨についてこんな事を言った。

「彼女、面白い子よね。二人の会話、盗み聞きしているようで悪いけど、笑っちゃった」

ビシッ。と、百合絵の何かにヒビが入る。

と、友達だと思われている…。

初日のインパクトは担任の黒酉、入学式の春海と畑山に負けない程だったのかもしれない。

少なくとも桜には。

「ねぇ、貴女達って仲良いけど中学から同じなの?」
「…んー…まー…」
「いいなー!私、中学からの友達殆んど桐海に居ないから…羨ましい!」
「あはは…」

そんなに羨ましけりゃ、代わってやりてーよ。

と、あくまで心の中で百合絵は毒づいた。

どこをどう見積もったら仲良く見えるのか理解し難い問題だが、百合絵は茨を友人としてではなく、加害者と見ていた。

最早犯罪の域に達した茨は天晴れである。
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