茨ちゃんは勘違い
ニラレヴァが牛になれ!と言えば、タレントはモーと鳴くし、亀になれ!と指差せば、床に踞って首だけノソノソと奇妙に動かすようになる。

どういった仕組みなのか、どんな魔法を使ったらああなるのか。

子供心ながら、茨は瞳を輝かせた。

(すごーい、すごーい、すごーい!ちょーすごーい!!)

茨は、バシバシとブーさんの顔を叩きながら、興奮を隠しきれず、食い入るようにブラウン管に引き込まれていった。

そして、ニラレヴァがある女優の前に立ち、次なる催眠をかけようとした時だった。

女優は足を組み、怫然とした態度でニラレヴァを睨み付けると、こう言い放った。

「アタシはアンタの催眠術になんか、かからないんだから!!」

その根拠の無い自信がどこから湧いて出てくるのか分からないが、少しも怯まない女優の姿に、茨は対抗意識を燃やした。

(あ、あたしも"さいみんじゅつ"なんかに、かからないもん!)

女優と同じようにニラレヴァを凝視すると、力んでブーさんの首をもいでしまった。

ニラレヴァはオーバーに天を仰ぐと、通訳にボソボソと異国の言葉で話した。

ニラレヴァの話を黙って聞いていた通訳は、こんな風に訳した。
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