茨ちゃんは勘違い


……

………

その頃、百合絵は茨が行きそうな場所をしらみ潰しに移動していた。

桜が言っていた『山程のラブレターを両手に抱えて』いたのが本当なのだとしたら、どこかで鉢合わせになってもおかしくない筈なのだが、一向に見つかる気配が無い。

それにしても、一昔前の田舎の学生なら未だしも、21世紀を迎えたこの時代に、ベタな事をする奴がまだ居たのかと百合絵は思った。

しかも数人ときてる。

もしも茨より先に、下駄箱を開けていたとしても、今現在恐らく茨が『行っている事』と同じ事を百合絵はするだろう。

しかし、自分宛でも無いラブレターに対して(いやまぁ勘違いなのだろうが)、勝手な事をされては困るので、然るべき制裁を今日こそ行うべきなのだろうと百合絵は心に決めていた。

思えば中学時代に、キチンと思った事を言えば良かったと今更ながら反省する。

自分の体裁を考えるあまり、茨に対して甘い態度を取っていた自分の責任でもある。

だからこそ…

「見つけ次第、即ケリをつけなきゃ…」

百合絵は怒りを通り越し、今や静かな殺人マシーンと化していた。
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